と、同時に身を隠していたスキルの効果が完全に消滅する。隠密スキルはあくまでも身を隠すためのものである。気づかれたらそれで終わりなのだ。
 じわり、とアイリーシャの目に涙が浮かぶ。瞬きをして追い払おうとしたけれど、それは無理な相談だった。

「アイリーシャ・シュタッドミュラー……」

 アイリーシャを地面に押し倒した本人の唇から、呆然とした声が漏れる。

「……なぜ」

 なぜ、と問われても。
無言のまま、エドアルトを追いやろうとする。今度は、アイリーシャの細腕でも彼を追いやることに成功した。
ぼたぼたっと涙を落すと、相手はものすごくうろたえた顔になった。

「……わ、悪い。怪我はなかったか!」

 剣をおさめたエドアルトは、アイリーシャの腕を掴んで座るのに手を貸してくれる。
一度出てしまった涙を引っ込めるのは難しくて、アイリーシャは無言のまま首を縦に振った。

「本当に悪かった! 怪我をさせるつもりはなかった!」

 いったいこれは、どういうことなのだろう。自分の前で深々と頭を下げるエドアルトの前でアイリーシャは困惑していた。