「その~、ワザとではなくて……ごめんなさい」
紅はしゅんと肩を落とす。初対面といい、どうしてこうもタイミングが悪いのだろうか。彼女とは徹底的に相性が悪いのかも知れない。
「別にいいわよ、聞かれても。なんとなく察したでしょ? 私、宗介を好きなわけじゃないわ。だから、どうそ心置きなくお幸せに」
投げやりな感じで莉子は言う。でも、その表情にはほんの少し寂しさが滲んでいるように見えた。
「いまの電話の相手……恋人ですか?」
少し迷ったが、紅は尋ねてみた。そう親しくもない相手のプライベートに立ち入るのは自分らしくないとも思うが、なんとなく莉子は誰かに話したいんじゃないかと思ったからだ。
そして、その紅の読みは当たりだったらしい。
「もう別れたわ。イギリスで医者をしてる日本人よ。あっちでなら何不自由なく暮らしていけるのに、アフリカに行きたいんですって。薬も手に入らない難民を救いたいなんて……偽善者もいいところで、うんざりよ」
「立派なお医者様なんですね……」
莉子自身もそう思っていることは承知のうえで、紅は言った。
紅はしゅんと肩を落とす。初対面といい、どうしてこうもタイミングが悪いのだろうか。彼女とは徹底的に相性が悪いのかも知れない。
「別にいいわよ、聞かれても。なんとなく察したでしょ? 私、宗介を好きなわけじゃないわ。だから、どうそ心置きなくお幸せに」
投げやりな感じで莉子は言う。でも、その表情にはほんの少し寂しさが滲んでいるように見えた。
「いまの電話の相手……恋人ですか?」
少し迷ったが、紅は尋ねてみた。そう親しくもない相手のプライベートに立ち入るのは自分らしくないとも思うが、なんとなく莉子は誰かに話したいんじゃないかと思ったからだ。
そして、その紅の読みは当たりだったらしい。
「もう別れたわ。イギリスで医者をしてる日本人よ。あっちでなら何不自由なく暮らしていけるのに、アフリカに行きたいんですって。薬も手に入らない難民を救いたいなんて……偽善者もいいところで、うんざりよ」
「立派なお医者様なんですね……」
莉子自身もそう思っていることは承知のうえで、紅は言った。



