「あの、大丈夫ですか?」
「はい……?」
このままスルーして見捨てられなかったので、思い切って声をかけた。
顔を上げた彼と目が合う。
つぶらな瞳に長いまつ毛、ふっくらした唇。
可愛い系の顔とは裏腹に低い声。
ん? この顔と声、どこかで……。
「き、清花さん……」
記憶を辿っていると、先に彼が弱々しい声で口を開いた。
これまで出会ってきた人の中で、私のことをこのように呼ぶ人はたったひとりしかいない。
「もしかして、透瑠くん……⁉」
「は、はい……」
見つかってしまった……! と言わんばかりの顔で返事をした彼。
水沢透瑠くんは、中学時代の親友の弟で、よく一緒に勉強したり、遊んだりした仲。
色々あって、途中で引っ越しちゃったけれど、まさかここで会えるとは思ってなかった。
高校生になるタイミングでこっちに戻ってきたのかな?
「震えてるけど……どっか具合悪いの?」
「お腹が……教室が寒くて……」



