「あの……」
「ん?」
「そのアメどうしたんですか」
「あぁ……菫にもらったの」
沈黙の中、先に口を開いたのは透瑠くん。
気まずさを消すようにアメを見せながら答えた。
「……アメって本命にあげるやつらしいですよ」
「うん……でも、隼と怜也くんにも渡してたし、多分深い意味はないと思うよ」
「確かに。あのラグ先輩ですもんね」
少し笑顔を見せた彼を見てホッとする。
良かった。普通に話せてる。
「今朝もらったせんべい美味しかったです。ありがとうございました」
「いえいえ。お口に合ったんなら良かったよ」
喜んでもらえて胸を撫で下ろす。
雑談していたら、あっという間に別れ道に到着した。
「あの、14日空いてますか?」
「うん。空いてるよ」
「渡したい物があるので家に伺ってもいいですか?」
「う、うん。いいよ」
14日の午後に会う約束をして別れた。
渡したい物……バレンタインだからチョコレートぐらいしか思いつかないな。
それか──。



