「いえいえ。あれ? 水沢くん、お菓子食べたの? 口に食べかすついてるよ?」

「えっ!」



先生に教えてもらい、机に置いてある鏡を覗くと、口の端にチョコがついている。

先生の前で……恥ずかしい……。

もらったティッシュで口を拭き、職員室を後にした。

そのまま図書室に行こうとすると……。



「あっ」



保健室前の廊下に、海先生と清花さんがいるのを発見。

ちょうど良かった。
せんべい美味しかったってお礼言おうっと。



「きよ……」



呼びかけようとした瞬間──彼女が先生にラッピングされたお菓子を渡した。



『違うよ! 人として好きなだけ!』

『もう、先生のことはただの憧れだって』



……そうだよ。
先生のことは、そういう目で見ていない。

ときめいた時もあったけど、1回だけ。

単にお世話になったからお礼として渡しているだけ。


そう強く自分に言い聞かせる。


けど……嬉しそうな横顔が恋する乙女みたいに見えて、胸がチクチク痛い。



「あ、透瑠! これから図書室行くけど、透瑠も……どしたの?」

「樹……」

「ちょっ……大丈夫? 何かあった?」



楽しそうに笑って保健室に入っていったふたりを見て──俺は告白する勇気がしぼんでしまった。