小動物な後輩君の愛が深すぎる

迫力にひるんでドアを押さえていた力が弱まり、彼女が中に入ってきた。

視界に入る恐ろしい顔にビクビクしつつ、トイレに逃げ込めば良かったと後悔しつつ、取られるまいとぐるぐる逃げ回る。


とりあえず、ここじゃ物が多いからすぐ捕まってしまう。隙を見て部屋から出ないと。



「わっ!」

「捕まえた……!」



タイミングを見計らっていると、とうとう腕を掴まれてしまった。



「返しなさい」

「は、離してよ」

「それ返してくれたら離すよ」



冷たく鋭い目つきに抑揚のない声。

一気に血の気が引いて冷や汗が流れた。


振り切ろうと腕をぶんぶん振るも……。

そのまま壁に押しつけられ、彼女は紙切れを持っている俺の手首を、もう片方の手で掴んだ。


空いている手で離そうとしても、両手でがっちり掴んでいるためびくともしない。

怒ったら怖いのは知ってたけど、こんな至近距離で怒られたらたまったもんじゃない……!



「返す! 返すから! 痛いよ!」

「……っ! ごめん!」



叫びながら謝り、恐る恐る紙切れを返すと一気に体の力が抜けて、その場にへなへなと座り込んだ。