僕はリアリティのない話が嫌いだった。
フィクションはどこまで行ってもフィクションなのだ。ノンフィクションに突然変異することはあり得ないし、そんなものはすべて画面や紙越しの話。
それなのに、今の僕と言ったらどうだろう。
“死んだ人に言葉を届けられる方法”その言葉にひどく興味を示していて、方法を知りたいとさえ思っている。
「私も信じられなかったよ。…もちろん、今だって信じきれない部分はあるがね」
「…それは、今もどこかにあるんでしょうか」
「ああ。場所や方法についてはその時彼に教えてもらったから知っているよ。…ただ、このポストを使うにはどうやら条件があるみたいなんだ」
「…その、条件っていうのは、」
自分がこんなにも物事に興味を示すのも、これもまた久しぶりのことだった。生きる糧を失った僕は今、必死に生きるために道を切り開こうとしている。
このままじゃだめだということを、だれよりも分かっているのは自分だった。
「手紙の内容を第三者に公言しないこと。相手の生年月日、名前、性別を正確に記載すること。それから───…」
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