シニアトポスト






「男の子は一度も、たったの一回も、彼女に気持ちを伝えたことがなかったんだ。彼女の“好き“に同じ言葉を返したことがなかった。彼は、泣きながら私に言った。『死んだ人に言葉を届けられる方法はないんですか』と」



「まさかそんなものがあるとは思えないだろう?」そう言ってマスターは笑う。僕はその言葉に短く「…そうですね」と返した。


死んだ人に言葉を届けられる方法があるのなら、僕だって知りたかった。
きみに──莉乃に、言葉を、後悔を、謝罪を届けたい。



「最初は私も信じていなかったんだ。そんな方法があるのなら、私だってとっくの昔に死んだ母親に言葉を届けようとするだろうしね」

「…え、」

「──だけど、本当にあるらしいんだ」



マスターの言葉に、僕は息を呑んだ。
…まさか、そんな方法が、本当に?



「彼がその話を何処から聞いてきたかは分からない。本人も詳しくは覚えていないけれど、ある人から聞いたらしいんだ。…死後の世界に手紙を届けてくれるという、──”シニアトポスト”の話を」