「こうでもしないと平気で約束破るだろ」

「破んないよ」


「約束破んないって約束できんの?」

「……努力します……」


「信用できないな。お前すぐ忘れるもん」

「だからあ、忘れないように努力するって! 部屋はともかく、あの漫画だけは燃やされたくないし」



すると、ふっと力が抜けたように笑われた。

一瞬、その顔が寂しそうに見えたのはたぶん気のせい。



「どうせ、あのことも覚えてないくせにね」



ざあっと風が吹いて、利人の言葉をさらっていった。

小さすぎて、いま風が吹かなかったとしても、たぶん聞き取れなかったと思う。


……なんて言ったの?
尋ねる前に利人が口を開く。



「誰かさんが早起きさせるせいで、今日は本気で俺も疲れた」



そんな嫌味に、言い返そうと口を開いて。


……だけど。


「……っ」


そのまま何も言えなくなったのは、利人の腕に抱き寄せられたから。



「このまま俺の部屋行こ」

「っ、? へ、……え?」

「お前のせいなんだから、労るくらいはできるでしょ」



あまいあまい声。

ぐらんと目眩がした。