照れたように顔を赤くする斉藤くんはめずらしいと思う。
斉藤くんらしからぬ。
リハカノはとりあえず保留なのね。
まあそうだよね。本命の子がいるのに、あたしでリハーサルするって、誠実じゃない気がするし。
「うん、わかった。頑張ってね」
どこかホッとした気持ちで返事をして、スクバの荷物の整理にとりかかる。
そこであることに気づいたあたし。
中身、なんか少ないような……。
「うああ、やっちゃった」
思わず声に出た。
どーしたの、とのぞき込んでくる斉藤くん。
「5限目と6限目の地理と数学の教科書忘れちゃったの」
「まじか」
「うー。利人に借りにいかなきゃ……」
「いいよ。オレ見せるし。机くっつければいいっしょ?」
「ううん、大丈夫。利人に、隣の人に見せてもらうのはだめって言われてるんだよね」
「利人くんに? なんで?」
キョトン、とされて、あたしもキョトンとした。