お願いだからこっち見ないで。
って念じても、もう遅い。



「あたしいつもこのくらいの顔色だと思うけどな〜」

「いやどう見ても赤いよ、熱あるんじゃないの? 大丈夫?」

「あー、うーん、そんなことはないようなあるような……」



左手に意識が集中しちゃって頭がまともに働かない。

利人、手離さないし。


木村くんに見られる前に解きたいのに、逃げようとすればするほど強い力でぎゅっとしてくる。


どーいう魂胆なの?



「菜結ちゃん、体調悪いんなら学校ついたら保健室行く?」

「う、んーん、大丈夫! それより、1限目の席替え楽しみだよね!」



冷静を装いながらナントカ木村くんと会話を続けて、やっとこさ学校にたどり着いた。


校門を抜けたと同時、利人の手はあっさり離れていった。