「やばーっ、忘れてたっ」

「おい〜しっかりしろ〜! 菜結ちゃんたしか先月も忘れかけてたっしょ!?」


「わ〜、そうだ思い出した。あたし先月も木村くんに教えてもらったんだったね。大感謝」

「もー菜結ちゃんマジ心配! 会長、菜結ちゃんのスケジュール管理ちゃんとしてあげなよ〜、お世話係だろ!」



木村くんはそう言いながら、あたしの隣に並んできた。


あたしの左に利人。
右に木村くん。
サンドイッチ状態。



「何回も言ってるけど、利人はお世話係じゃないよー」

「でも実際やってること変わんなくね? 菜結ちゃんが教科書忘れたとき、会長がいっつも教室まで自分の貸しに来てるし」


「うっ……。それは、」

「マジで面倒見のいいオニーサンって感じよな!」



もう、やだって言ってるじゃん。

兄妹にしか見えないの、わかったから!
みんな揃って言わなくていいから!

そう、心の中で憤慨したときだった。



左手に、ふと低い体温を感じた。


───利人だ。

利人の手が、あたしの手に触れてる。


最初は、ただ当たっただけだと思った。

でも、木村くんが反対側で笑っているあいだにも、指先は、しっかりと絡んで……。