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そのあとは、至っていつも通りの登校風景だった。
しっかり、スカートの長さまで注意された。



──“毎晩お前が泣くまで可愛がってやろうか───……”


気を抜くと頭の中で何度もあの声が再生される。

だめだめだめ……想像したら負けなの。



「菜結ちゃん、おっはよー!」


悶々として困っていたところに、そんな声。

見ると、クラスメイトの木村くんだった。

化学の班が一緒で、最近よく話すようになったんだよね。



「会長もおはー!」


すると利人は、爽やかさと優美さを兼ね備えた完璧スマイルで「おはよう」と返した。


この切り替えには未だに慣れない。

声のトーンも全然違う。
もはや誰?

この猫かぶり!



「菜結ちゃん今日早いね! オレは日直だから早く来たんだけど」

「あ〜日直かあ。大変だね」


「そう、マジだるい! てか明日は菜結ちゃんだよ、日直! 出席番号オレの次でしょ?」

「……あ!」


あ、そっか。
木村くんの次、栗田だ。
栗田菜結。あたし。