やがて本格的に酸素が足りなくなって、体からがくんと力が抜けた。
気だるい甘さを残して、倒れ込んだ……利人の腕の中。
なだめるように背中を撫でられると、だんだんと眠気が襲ってきた。
あまりに心地良いから、この出来事は、最初から最後まで夢だったんじゃないかって気がしてくる。
「菜結、くたばるの早いよ。もう終わり?」
「ぅ……なんか……すごい眠たい……」
「はいはい。ベッド貸してやるから、もう寝ようか」
「……じゃあ、利人も……」
「え?」
「利人がいっしょじゃないと、なゆ寝れないの……」
現実と夢の境界がいよいよわからなくなってきた。
自分の声も、どこか遠くで聞こえる。
「お前たまに自分の呼び方、“なゆ”に戻るよね。俺がせっかく直してやったのに、まだ時々、小さい頃のまんま」
「………」
利人がなにか言ってるけど、眠すぎてもう聞き取れない。
意識が遠ざかって、完全に真っ暗になる寸前。
「菜結、おやすみ」
聞いたこともないくらい優しい声といっしょに、抱きしめられたような気がした。



