そう言って洗面所を出ていってしまった利人。
遠ざかっていく足音を聞きながら、あたしはしばらく放心していた。
キスは、本命と俺だけ。
キスは、本命と、利人だけ……。
……それってつまり!?
素早く口をゆすぐ。歯ブラシを歯ブラシ立てに勢い良く突き立てて、ドタバタと利人を追いかけた。
リビングは空。
ってことは、利人はおそらく自分の部屋。
「利人……あの、」
ドアを開けたとたん、利人の肩がびくっと反応したのが見えて。
その反応に逆にびっくりして、一旦ドアを閉めてしまった。
背中を向けた状態だったからよく見えなかったけど……なんか、頭抱えてたような。
とりあえず仕切り直し。
今のは、礼儀がなってなかったよね。反省。



