利人はびっくりしたのか、あたしから手を離した。
そこで、ハッと冷静になる。
まずい。ここで気持ちがバレたら、距離を置かれちゃうかもしれない。
そんなの耐えられない。
「あ、えと……この状況、あたしてきにも、練習に、ぴったりだな〜……と」
「………」
「男の子とキスする……練習というか、ほら、彼氏ができたとき、そーいうことに慣れてないと……上手じゃないと、愛想尽かされちゃうかもだし……」
口から出まかせだけど、けっこうそれっぽい理由になったんじゃないかな……?
しどろもどろになりながら相手を見上げる。
返事は……。
「そう。じゃあやる?」
うそ、あっさりオッケー?
でも、なんか、目が笑ってない。
「や、やっぱ冗談───ひゃあっ、」
言葉をさえぎるように、突然ぐいっと引き寄せられた。



