これは開き直ったというよりも、素直な気持ち。


利人に何年も片想いし続けているせいで枯渇した心を、恋愛漫画で潤してるんだよ。


ヒーローとヒロインを、利人とあたしに置き換えて読んでるなんて、しんでも言えないけどね……。


だから、あの漫画を奪われたらあたしは生きていけない!




「しつこいかもだけど、お父さんとお母さんには、ぜっっったい言わないでね?」

「だから、お前がいい子にしてる限りは言わないって」


「じゃあ安心していいんだよね? あたしいつもいい子だから」

「俺の部屋に泊まりにくる時点でいい子じゃないけどね」



雑にそう言い放つと、利人はすくっと立ち上がった。


「風呂入ってくる」

「……あ、ウン」


ぽつん。あたしはひとり、部屋に残される。


利人は家の都合でひとり暮らしをしてるから……、今夜は、ふたりきり……。



今さらながら緊張してきて、とりあえずテレビでも観ようかなとリモコンを探したテーブルの上に、

ちょっと高級そうな箱に入ったチョコレートを発見した。