「っ、は? おまえ、急に何……」


利人が珍しく慌てた素振りを見せた。


「…………りひと」

「うん。なに、どうしたの」


声、いつもより優しい。大好き。

でもこういう無自覚な思わせぶりなところ、だいきらい。

ふたつがごちゃまぜになって、さらに泣けてくる。


あたし、自分が思ってるよりもずっと利人への気持ちをこじらせてるのかも。

一世一代の恋なのかも。




「……泊まる……」

「とまる?」

「利人の部屋、泊めて、今日……」



勝手に口から出てきたその言葉は、あたしが授業中に必死に考えた計画を、完全に無視したものだった。