少しかすれた声に鼓膜を揺すられ、わけもなくまた泣きそうになる。



「鼻血止まったら教えて」



こつん、とあたしの肩におでこをくっつける気配がした。

後ろからぎゅーされた状態で、これは、さすがに……。


もう一度言いたい。

“どうしちゃったの利人”


うれしいのに。これでもかってくらい理想のシチュエーションなのに。
浮かれる心の中に、黒い何かがふと影を落としてくる。


利人のいう、“遊び相手”。

その人たちにも、こんなことしてるの……かな。


利人がぎゅってする相手は
なゆだけじゃないとやなのに……。


おかしいかな。キスやその先を奪われるより、よっぽど苦しいって思うのは……。


急に襲ってきた虚しさと利人の持ってきてくれた氷が、あたしの熱の温度をゆっくり下げていく。

永遠に止まらないんじゃないかと思った鼻血の勢いも少しずつ弱まって、ツンとした鉄の匂いだけが残った。