あたしの必死な訴えは丸無視されて。
難なくソレを手にした利人は、あたしを見下ろして、にやり。
そしてなんと、表紙が見えないように巻いていたブックカバーまで外してしまった。
「やっ、利人……っ」
「改めてやばいな、このタイトル……」
「ほ、本棚に戻して!」
「”意地悪な幼なじみの甘い指先に……」
「アーッ! 読み上げちゃだめっ、だめなの……!!」
利人の手中にあるソレを奪い返そうと手を伸ばす。
あたしが伸ばした手をさらりとかわして、ぱらぱらページをめくる悪魔。
恥ずかしさと焦りが混じって鼻血ばかりか涙が出ちゃいそう。
利人の手に取っている一巻は、冒頭からいきなり過激シーン満載で。
のちのち、それに至った経緯が語られる、っていう造りなんだけど……。
「なあ、このページだけ開きやすくなってるけど」
「っ!」
「お気に入りなんだ?」
「それ、は……、う…」



