──────ピンポーンって、再びインターホンが鳴ったのは、それから約40分後。
ほんとに来た。冗談じゃなかった。
「……お風呂沸かしといたよ」
「どうも」
「利人から入る?」
「ん、一緒に入るんじゃないの?」
「っは、え?」
動揺するあたしを見て意地悪く笑う。
その瞬間に悟る。
そうだよね。からかわれただけだよね。
「あたしはあとで入る……」
恥ずかしさのあまり真っ赤になったのを見られたくなくて、そそくさと背を向ける。
利人、なんで今日はこんなに押せ押せなの?
恋人ごっこ?
自分の部屋に逃げて、扉を閉めようとした──────のを、誰かに遮られた。
誰かって。ひとりしかいない。
「ねー、菜結」
やけに丁寧に名前を呼ばれて、胸がぎゅっと締めつけられた。
ちょっとかすれた低い音が、あたしの耳には、どうしようもなく甘く響く。
「なんで逃げんの。入るよね、ふたりで」
「っ、……」



