暴いて、甘い衝動 【再連載中】


「なんで泣い……いや、は? 俺の役に立ちたかったの……?」

「立ちたかったよ、だっていつも迷惑かけてるし」


「……そんなの初めて聞いた」

「っ、もういい、うるさい、早くあっちいって!」



胸板を押し返していると、ふいにスマホが鳴った。



『菜結さん、今お帰りでしょうか?』



相手はエリカさん。



「あ、はい、今帰ってます」

『おひとりで?』

「いや……利人もいます……一応」

『ふふ、仲直りされたのですね。よかったです』



仲直り……。
むしろ絶賛こじれようとしてるけどね。



『わたくしはもうあがらせていただきますので、お電話した次第です。お夕飯はいつものところにご用意しております』

「あっ、いつもありがとうございます」


『ああそれと、本日お夕飯を少し作りすぎてしまいまして……。よかったら土屋さんも召し上がっていってくださいな」



スピーカーにしてたから、利人にも聞こえたらしい。


「エリカさんありがとうございます、いただきます」



あたしのスマホに向かって、笑顔でそんなことを言う。


ニコニコしてるこの顔は、珍しくつくりものじゃない。長年見てきたからわかるよ。

エリカさんのご飯はスペシャルに美味しいもんね。