菜結(なゆ)、スカート短すぎ」


いいかげん聞き飽きた声が、今日もあたしを引き止める。

今日という今日は、ぜったい振り向いてあげない。


「おい、菜結」

「………」

「おまえが直さないと、俺が怒られる」

「………」


聞こえない聞こえない。

無視して足を早めると、チッ…と治安の悪い音が後ろから飛んできた。


あーあ、いっけないんだ〜〜!
みんなのお手本であるべき生徒会長様が舌打ちなんかしたら〜〜!


……なんて、心の中で毒ついたのもつかの間。



「いい度胸してんね、ほんと」



そんなセリフが雑に放たれて、同時に、手首にぎゅっと強い力が加わった。

伝わるのは、あたしより少し低めの……昔からよく知った体温。


「俺の言うこと無視したら、“あのこと” お前のお父さんにバラすけど。……いーの?」