小学生時代、四年生くらいからの記憶は今も鮮明だ。あの頃の私は、周りの皆をからかうのが大好きだった。
登校中にロープの切れ端を拾ったら、すかさず左右に細かく振って、蛇だと友人を驚かす。
給食を喉に詰まらせたフリをしたり、赤い絵の具まみれにした手を見せて、指を切ったと騙したり。
一番の被害者は、同じ町内に住む紗代ちゃんだろう。
「アヤアヤ、やめてよ! もうっ」
何度こう言わせたことか。
ちなみに、アヤアヤという珍妙な渾名は定着しなかった。
綾月亜耶、アヤが二回も続くからアヤアヤ。
“アヤアヤ”は中学に上がる時には廃れ、親しい友だちは私をアヤと呼ぶようになる。
変わったのは呼び方だけじゃなく、イタズラの傾向もだった。
男子顔負けの行動は鳴りを潜め、替わって口で相手を煙に巻くことが増える。
お気に入りは、「見える」パターン。
喋っている途中で、何かに気づいたように宙を凝視したところで、慌てて目を逸らす。
身内に不幸があった? なんて尋ねれば、顔をヒクつかせる級友もいた。
決めゼリフは、「知らなくていいこともある」だ。
いい加減、私の言動に慣れてきた紗代に取って代わって、中学時代の被害者筆頭は勝海が担った。
日坂勝海、同じ高校へ進学した上に、中高ずっと一緒のクラスになった腐れ縁。
新鮮味に著しく欠ける男子だけど、イタズラへの反応は抜群にいい。
どうもオカルト系を少し信じているようで、真面目な顔で背後霊を見てくれと頼まれたこともあった。
単純というか、騙されやすいというか。
念を込めた消しゴムだからお守りになるって吹き込み、ピンクのプラ消しを渡してみた。
勝海はその消しゴムを一度も使わず、その癖、毎日学校へ持って来ていたようだ。
将来、詐欺に遭うんじゃないかと、心配するレベルだよ。
ウソつきアヤ――そんなありがたくない二つ名まで作られたけど、人を傷つけるようなウソは言ってない。
みんな楽しんで、笑ってくれていたもの。
登校中にロープの切れ端を拾ったら、すかさず左右に細かく振って、蛇だと友人を驚かす。
給食を喉に詰まらせたフリをしたり、赤い絵の具まみれにした手を見せて、指を切ったと騙したり。
一番の被害者は、同じ町内に住む紗代ちゃんだろう。
「アヤアヤ、やめてよ! もうっ」
何度こう言わせたことか。
ちなみに、アヤアヤという珍妙な渾名は定着しなかった。
綾月亜耶、アヤが二回も続くからアヤアヤ。
“アヤアヤ”は中学に上がる時には廃れ、親しい友だちは私をアヤと呼ぶようになる。
変わったのは呼び方だけじゃなく、イタズラの傾向もだった。
男子顔負けの行動は鳴りを潜め、替わって口で相手を煙に巻くことが増える。
お気に入りは、「見える」パターン。
喋っている途中で、何かに気づいたように宙を凝視したところで、慌てて目を逸らす。
身内に不幸があった? なんて尋ねれば、顔をヒクつかせる級友もいた。
決めゼリフは、「知らなくていいこともある」だ。
いい加減、私の言動に慣れてきた紗代に取って代わって、中学時代の被害者筆頭は勝海が担った。
日坂勝海、同じ高校へ進学した上に、中高ずっと一緒のクラスになった腐れ縁。
新鮮味に著しく欠ける男子だけど、イタズラへの反応は抜群にいい。
どうもオカルト系を少し信じているようで、真面目な顔で背後霊を見てくれと頼まれたこともあった。
単純というか、騙されやすいというか。
念を込めた消しゴムだからお守りになるって吹き込み、ピンクのプラ消しを渡してみた。
勝海はその消しゴムを一度も使わず、その癖、毎日学校へ持って来ていたようだ。
将来、詐欺に遭うんじゃないかと、心配するレベルだよ。
ウソつきアヤ――そんなありがたくない二つ名まで作られたけど、人を傷つけるようなウソは言ってない。
みんな楽しんで、笑ってくれていたもの。