ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~

「ふぅ」

鏡にうつる自分の姿に何度目のため息をついただろう。

やはり、どんな理由があるにせよ、こんな結婚はするべきではなかった。

迫田さんが次男とはいえ、国内はもちろんここ数年は海外展開もしているSAkOTAリゾートの副社長で彼はやはり御曹司だ。

私の意見など通るはずもないどころか最初から聞かれることもなくて、全てはお祖母様の指示のもと結婚式の準備はあっという間に決められていた。

招待客は関連各企業の社長から政財界まで、今まで私が一度も縁などしたことのない人たち約300人…。

これからそんな大勢の人たちの前で、私は嘘の愛を誓い、幸せな笑みを浮かべて迫田さんの隣に寄り添う…。


考えただけでくらくらする。

迫田さんとの契約結婚がこんな大規模なものになるなんて想像もしていなかった。

だけど…。

おじいちゃんが喜んでくれた。
迫田さんと一緒におじいちゃんに結婚を報告にいったらおじいちゃんはものすごく喜んでくれたのだ。

あの笑顔を見て、嘘をつくことに心が痛んだが、おじいちゃんが私のことを心配せずに自分のこと第一優先してくれるならこのまま嘘をつきとおそうと心が決まったのだ。

「あーっ、ダメダメ!
自分で決めたんだからしっかりしなくちゃ!

ビビディバビディブー、ビビディバビディブー。

大丈夫。

私は綺麗、私は可愛い、迫田さんは私の旦那様。
私は迫田さんと結婚する…」


「クックッ、何を鏡に向かってぶつぶつ言ってるんだ?」

急に鏡にうつりこんだ迫田さんにびっくりして飛び上がる。

「きゃあっ!
黙って入ってこないでください」

鏡越しに睨み付けた迫田さんに、私は息を飲んで固まった。

シルバーグレーのタキシードに髪をセットして…。


カッコ…いい…。


ヤバい!!


めちゃくちゃこの人カッコいい!!!