ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~

「ふぅ」

二人になって思わず息を吐き出した私に

「大丈夫?
随分萎縮してたけど彼女に何か言われた?」

「えっ…えぇ、まぁ…」

曖昧に答えて苦笑いした私の様子で全てを悟った相楽さんは

「…気にするな。
うちの社員をけなすのもなんだが、見た目はいい女なんだが中身は…ちょっとな。
ハイスペックな男を釣り上げることしか頭にない」

吐き捨てるように言った相楽さんの顔は冷ややかで、さっきもそうだったがあまりいい感情を彼女にもっていないようだ。


「でも、あんなに美人なんですから当然ですよ。
こんな大企業で働いてるんですよ?誰だって素敵な人を捕まえたいじゃないですか。
例えば相楽さんとか、その…迫田さん…とか…」

モヤモヤしている胸の内を思わず言葉にしてしまい、しまったと俯いた私に、伸ばされた大きな手が軽く頭をポンポンと叩いた。

「大知はもてるからな。
社内はもちろんこのビルに入っている会社の女から声をかけられることなんてしょっちゅうだ。
いちいちそんなこときにしてたらきりがない」

予想していた事実を告げられ胸がかすかに痛みだす。
顔を曇らせた私の様子に気づかない相楽さんはくすりと笑い


「まぁ大知は誰のことも眼中にないんだけどな。
あいつが手に入れたいのは一人だけ。
ずっと忘れられない女の子がいるからね」

「えっ?」


聞き返して相楽さんを見上げようとしたとき、48階についたエレベーターの扉が開いた。
断ち切られた会話が頭の中でリピートする。

迫田さんにはずっと想いを寄せている女性がいる…。


その事実が私の胸を押しつぶす。

なんでそんな特別な人がいるのに私との婚約が発表されてるの…?


頭の中は真っ白で、うわの空な私の前にその人は現れた。

あれからずっと、不意に姿を見せるのではないかと屋上庭園で微かに期待を寄せて待ちわびていたその人が。

不敵な笑みを浮かべ再び私の前に立っていた。