「はぁ、どうにかうまくきりぬけられたな。
助かった、ありがとう朋葉」

屋上庭園から下っていくエレベーターに乗り込んだ私達は、緊張から開放されて二人してゆっくり息を吐き出した。

そして、お互いに顔を見合わせ

「「ふっ」」

と同時に笑い出す。不意に伸ばされた迫田さんの右手が、私の頬をぐいっとつまんだ。

「!、いひゃいっ!」


「…ったく、ほんとヒヤヒヤさせたよな。
ばぁちゃんにほだされて本当のこと言おうとしただろ」

頬をつまんだ手が離れて、さらりと頬を撫でると壁に手を付きそのまま私をみおろした。

いわゆる壁ドンという近い距離にオタオタしながら目が泳ぐ。

「だって…。
俺の言うことに黙って頷いて隣で笑ってろっていいながら知らんぷりしてたじゃないですか!

それに…あんなに優しいお婆様を騙してなんだか心苦しくなっちゃって…」

「はぁぁ。
あんなのばあちゃんが朋葉にかまかけたにきまってるだろ。
なかなかくえない人なんだよ、あのばあちゃん。
俺たちのこと半信半疑でずっと疑ってたんだよ」

「えぇ!そうなんですか!」

「俺が話し過ぎるのも嘘臭いだろ。だから様子見てたらお前思いっきり足踏むし。
草履でもそれなりに痛かったんだからな。でもまぁあそこで朋葉がいいタイミングで泣いてくれたからさすがのばあちゃんも信じてくれた。
名演技だったな。主演女優賞ものだ。とにかく結果オーライだ」

「……」


迫田さんの至近距離の笑顔に安堵と再び鼻の奥がつんとする。