「そんなに長いお付き合いなのにいつまでものんびりしてて今まで不安だったでしょうに。
本当にごめんなさいね。

大知のことずっと好いていてくれてありがとう。

えぇ、朋葉さんの気持ちは十分わかってますからこれからもずっと大知を支えてあげてちょうだいね」

あぁ、私なんでこんないい人を騙してるんだろう。

いくら迫田さんのことを助けるためとはいえやっぱりこんな嘘ついちゃいけない。

「あのっ……
お祖母様ごめんなさっ!んっ!!んんっ!!」

本当のことを話そうとした私の腕を引いた迫田さんは、私の頭を自分の胸に押し付け私の言葉を遮った。

「待ってくれよばぁちゃん!
せっかく俺が夜景の見えるレストラン予約して、プロポーズ計画してたのにぶち壊すのやめてくれよ」

「「えっ?」」

「あぁ、もぉばぁちゃんのせいで台無しだよ。
俺だってちゃんと朋葉との未来(さき)のこと考えてるから。
ちゃんと…結婚するつもりで付き合ってる。
朋葉しか考えられないから、俺。

だからばぁちゃん、今日は遠慮して?

それに朋葉のじぃちゃんも今日は具合悪くて寝込んでるんだよ。
そばについてなきゃいけないのに、今日は俺のために時間作ってくれたんだ。

だからもう今日は早く家に帰してやりたいんだ。
朋葉、今日はどうもありがとう。

また、日を改めてきちんとプロポーズする。

でも、これだけは俺も伝えておく。

朋葉、愛してる、大好きだ一生離さない」


ぎゅっと抱きしめられた迫田さんの腕の中で、私と同じくらい早い鼓動を刻む心臓の音がうるさいくらい耳に響く。

彼の言葉に勘違いして騒ぐ私の心臓とは違い、迫田さんは…。

大きな嘘をつき、心にもない言葉を口にしている緊張とお祖母様をだましている罪悪感の心音なんだろう。

こんな嘘、聞きたくなんてなかった…。

抱きしめられた腕の中で思わず流れ落ちた涙を目にしたお祖母様は、私が嬉し涙を流していると勘違いして、私達の偽りの告白に感動して瞳をうるませながら知基さんのお見合いの席に戻っていった。