「茉優は……笑ってたほうがいいよ」

「……っ!?」

【バカにしないでよ】

「バカになんてしてないけど、本心なんだけど」



そんなこと言ってもらえたことなくてすごくすごく嬉しかったんだ。


「……あっ、そうだ。俺のこと、あつきって呼べよ」

(……名前、呼び……なんて)

「永瀬くんじゃなくて、あつきって呼んでよ。篤樹の方が嬉しい」


私は渋々頷くと【分かった】と書いて、【あつきくん】と付け足した。


「おぅ、こちらこそありがとな……じゃあまた学校で!」


そう言って、篤樹くんは走って帰って行ってしまった。嵐みたいな人、だと私はこの時感じた。


それから毎日隣には篤樹くんがいた。そして、前の席だった面倒見のいい絵梨(えり)ちゃんに篤樹くんの後ろにいた律(りつ)くんの4人で過ごすことが増えた。

嵐のような人だけど、人を引き寄せる力は持っている……それが、永瀬篤樹という人だった。


「茉優! 帰ろ!!」

「篤樹は茉優ちゃんばっかだな〜! 俺らも一緒に帰るし!!」

「ねぇ、茉優ちゃん。一緒にかえろ〜」


この時からひとりぼっちだった私の世界に入ってきた彼は、ムードメーカーで楽しい……私に寄り添ってくれる優しい人だった。