「永瀬くん、その子話せないんだよ」

「え? 話せない?」


思わず下を向く。どうしよう……また、めんどくさいって言われたら……。


「だから、こっちで話そ!」

「……俺、こいつと話したい。なぁ、名前は? 耳はきこえるんだよな?」


私は思いきり首を縦に振り、ホワイトボードに【瀬奈 茉優】と書き【せな まひろ】と付け足した。


「まひろか〜……可愛い名前だな」

「……!?」

「ねえ、教科書見せて」


教科書……? あっ……教科書。
国語の教科書を取り出すと、永瀬くんは机をくっつけた。


「この方が見やすいんだよ、いいだろ」


いいけど……女子からの視線が怖い。絶対後から何か言われるかもしれないと思ったら憂鬱だった。