僕らが出会ったのは、今から9年前。
桜が咲き始めたあの日─︎─︎……。


「……これ落としましたよ」

「……っ……」


ハンカチを落としたらしい私は、見たことのない少年にハンカチを差し出された。

それを受け取ると携帯しているメモ帳に【ありがとうございました】と書いてお辞儀をした。
だけど、気まずくて彼の顔も見ずに走って行った。


「東京から来ました。永瀬篤樹(ながせ あつき)です」


小学4年の春。知らない少年は、私の通っている小学校に転校して来た。
永瀬くんは、茶色の短髪に派手なTシャツに短パンを履いていて。


「じゃあ……瀬奈の隣に座ってくれ」

「はい」


私の隣に来るのか……なんか嫌だなぁ。


「よろしくな……って、あのハンカチの」

「……っ」


……あの時の、子?