「もう授業始まる……」
見ればチャイムの鳴る時間が迫っている。
あんまり遅くなったらすずちゃんも変に思うだろうし、早く戻らなくちゃ。
「漣くん……」
ごめん。
本当にごめんなさい。
最後に心の中でつぶやいて、そっと彼の机をなでた。
漣くんは優しいから、
「そっか」
なんて、文句もなにも言わないで受け入れてくれるにちがいない。
そんな優しさに甘えて、自分の気持ちを押し殺して付き合うだなんて、やっぱり申し訳ないから。
『────海凪』
昼休みにされた、
ほんの一瞬だったけれど、とびきりあまくて優しいキス。
それがふと脳裏によぎって、頬がジワジワと赤くなりそうで。
また気持ちが揺らぎそうになったけれど。
別れよう。
もう一度決意を固めるように、手にしたタオルをぎゅっと握って体育館へ向かった。



