悪い優等生くんと、絶対秘密のお付き合い。

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「海凪!
今日も残ってく?」


「うん!間違えたとこ、見直しするつもり」


放課後。

テストが終わったこともあって、どっか行こっか、なんて声が教室中でチラホラ。


「あたしたちもさ、パーッと遊びに行かない?
校内じゃだめだけど、校外でなら彼氏作ってもなにも言われないよね!」


フフフっとしたり顔のすずちゃん。


「さっき花波(カナミ)から連絡きてさ」


「花波ちゃん?」


中学の時に仲良くしてた子の一人だ。


「あたしに会わせたい男子がいるって言ってて……」


すずちゃんは見た目ちょっと派手だけど、すっごく美人だし背も高い。

プラスとっても優しいから、中学の頃からめちゃくちゃ告白されてたっけ。


「すずちゃん、モテモテだね?」


「海凪ほどじゃないよ」


「え?」


「それでね、せっかくだし行こうと思うんだけど、不安だからついてきてほしいなーって」


お願いと手を合わせる。


ここまで真剣なすずちゃんは初めて見た。


うちの学校じゃずっと息詰まりっぱなしだし、よほど会いたいのかもしれない。


それに、大事な友達の頼みごとだもん。

無視するわけにはいかない!


「いいよ!
わたしも一緒に……」


行こうと手を取ろうとしたら。



「────向坂」



窓からふわっと入ってきた5月の心地いい風。

同時に後ろから聞こえた低い声。