漣くんの腕を引っ張って、近くの空き教室に入る。
授業開始時間が迫ってるとはいえ、ふたりで向き合って話してたら、なにを勘違いされるか分からない。
「ごめん、急に引っ張って……」
「ぜんぜん大丈夫」
誰もいない教室に入ったことで、ふっとやわらかい表情になる漣くん。
漣くん。
やっぱりわたし、無理だよ。
「あの、ね……」
「ん?」
「……話が、あります」
「話?」
「はい……」
漣くんの気持ちは嬉しかった。
こんな勉強しか取り柄のないわたしなんかを好きになってくれて。
大切にしてくれて。
結局どうしてそこまで好きになってくれたのかだけは、分からなかったけれど……
漣くんが特別な顔を、素顔を本当の姿をわたしだけには見せてくれた。
それだけで、最初は苦手で怖かった印象が今はぜんぜん。
たまにいじわるだったりするけれど、それ以上にあたたかくて優しい表情をする人なんだって分かって。
それだけで、言葉なんかじゃ言い表せないくらい、嬉しかった。



