「目泳ぎすぎ」
「だって!」
男の子とこんなに近づくことないからはずかしい。
「ちゃんとこっち見て?」
「いやです」
意地でも向くもんかと視線だけ逸らす。
顔も体も身動きが取れないから、今できるせいいっぱいの抵抗がこれ。
「今日一日ずっと海凪のこと見てたのに、いつになってもこっち見てくんないし」
「あからさますぎだよ……」
「気づいてたんだ?」
「あんなの気づかない方がおかしいよ……」
「海凪かわいかったなー
授業中もさっきも。俺を意識しまくってテンパってて、まじで抱きしめる寸前だった」
「っ、変なこと言わないで!
だいたい見てたの、今日だけの話じゃな……」
!!
「あ。やっと目、合わせてくれた」
「っ〜!!」
そのなんとも嬉しそうな表情といったら。
引っかかったと言わんばかりに優しく目尻が下がふ。
意識しないように。
そう思うのに、今のは。
わたしの心臓を確実に殺しにきてる。
胸の中であまいあまい音がする。
ああもうっ、うるさい。
こんなの、不可抗力だ!



