悪い優等生くんと、絶対秘密のお付き合い。

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「じゃあさっそくはじめよっか!」


「そうだね!」


放課後。

どんどん人がいなくなる教室で、机を向かい合わせにする。


「もう帰っちゃうの?」

「そうだけど」


残念そうな声の方を見ると、変わらず女の子に囲まれている漣くん。


「せっかくだし、この後いっしょにお茶でも……」


「大事な用があるから」


「少しでも、だめかな」


「……」


「ねえ、漣く……」


「しつこい」


「っ……!」


「無理って言ってるのが聞こえない?」


鬱陶しいと言わんばかりに顔を歪めて漣くんはカバンを持つ。


塩対応すぎる……


そのまま肩を落とす女の子たちにふりかえることなく、教室を出ようとしたところで。


!!


流れるような視線と一瞬だけ合った。


心臓がうるさい……

それは女の子たちに向けられたものよりもずっと。

ずっと優しく、あたたかい眼差しで。


『待ってる』


直接言われたわけじゃないのに、耳元でそう聞こえた気がした。


「す、すずちゃんっ!」


「どしたー?」


「がが、がががんばろうね!」


「めちゃくちゃ噛み噛みだけど」


熱くなる顔を隠すように、勢いよく俯いてしばらくして。


あ、もういない……


ゆっくり顔を上げると、漣くんは教室から出ていったあとだった。