「なんで」
途端に声のトーンが何倍にも下がる。
なにか怒ってる……?
「まさか他の男から呼びだしとかじゃないよな?」
「ほ、他の男……?
ちがうよ。すずちゃんに、勉強教える約束してて」
「小山に?」
「そうだよ?」
「分かった。なら、終わったらすぐ来て。
俺、待ってるから」
「でもどれくらい時間かかるか分からないから、帰ってくれてても……」
「無理。
海凪が来るまで帰らないよ。
それとも、俺には待っててほしくない?」
「そんなこと……!」
「ならいいじゃん、そういうことで。
俺、一日一回は絶対海凪の声聞かなきゃだめだから」
「今、話してるよ?」
「ぜんぜんたりない。海凪が不足してる」
「っ、」
「もっと声、聞きたいんだよ」
「……」
「先戻るけど、海凪はもうちょいしてから教室戻りなね」
「えっ」
「そんな真っ赤な顔してたら、俺ますます授業中海凪のことガン見しそうだから」
「っ、」
「ほんっとかわいい。
じゃ、またあとでな」
ポンっと頭にのせられた手にビクッとすると、漣くんはフッと笑って去っていく。
心臓がバクバクとうるさい。
漣くん。
それは、ずるくないですか……?



