なんで、どうして。
「ここにいるの……?」
声まで涼やかな彼は、にこっと笑って見下ろしてくる。
せっかく逃げたのに、これじゃ意味ない。
それに、顔が恐ろしく笑顔すぎて。
教室での無表情がまぼろしみたい。
「ふ、ふたりで話してるの見られたら大変だよっ」
「大丈夫。ここら辺、人いないし」
そう、なんだけど……
みんな基本教室でお昼を食べてる。
でももし、見つかったら……
「だから今はちゃんと、向坂ってよんでる」
「そういう話じゃなくてっ」
フッと微笑む顔が近づいてきたと思ったら。
「ほんとは、海凪ってよびたい」
「っ、よばないで……っ」
「照れてる?かわいすぎ」
耳に注ぎ込まれるかのような低音。
ほんっと、むり……っ



