遅れること、漣くんに伝えなきゃ。
でもどうしよう。
メアド交換してないから、直接か、この間してくれたみたいにメモで伝えるしかない。
直接……は、むりだ。
女の子だらけのあの中に、行けるはずがない。
だとしたらメモになるけど、どうやって本人に渡そう……
話さないで有名なわたしたち。
そんなふたりがメモを渡し合ってたなんてバレたら絶対勘ぐられる。
漣くんみたいに、スマートに渡せる自信もないし。
どうしよう……
お弁当を食べながら、おそるおそる漣くんを見たとき。
「っ、」
バチッと目が合ってしまった。
「っ、すっ、すずちゃんっ!」
「どうした海凪!?」
急に思いっきり立ち上がったわたしに、すずちゃんは目を丸くする。
「ちょっとトイレ行ってくる!」
「ああ、うん……って、そんな張り切らなくても」
引き気味の声に後ろ髪を引かれながら、ダッシュで教室を出る。
目、合わないようにしてたのにっ。
そもそも漣くん、何回こっち見てるの……っ
多目的教室が集まった人気のない廊下まで来て、息をはいた。
べつに逃げることなかったのに、自然と足が動いてた。
妙に恥ずかしくて、くすぐったくて。
顔を見られたくなくて。
「戻らなくちゃ……」
すずちゃんに心配かけちゃう。
そう思ったとき。
「────向坂」



