きっと今までのわたしだったら、迷わず学校生活を取っていた。
中学時代、何よりも東宮に入りたくて、必死に勉強して。
無事合格して入学できてからも、とにかく上を目指すその気持ちは変わることはなかった。
けれど……。
七流くんに告白されて、つきあって。
いろいろ悩みや不安はあったけれど、その度に取り除いてくれて、まっすぐに気持ちを伝えてくれて。
ああ、わたしはこの人が好きなんだって自覚したら、もう七流くんしか見えなくなって。
「わたしは……」
「うん」
「漣くんと会えなくなるほうが、いやです」
隣で七流くんが大きく目を見開くのが分かった。
「勉強は、どこに行ってもできます。東宮でもそれ以外の高校でも、わたしの上を目指すという気持ちは変わりません。ですが、漣くんとの別れは、今の気持ちを全て捨てなければいけません。そうなったらわたしは、ふたりで過ごした日々のこともきっと捨てます。なかったことにします」
でも、それは……。
「漣くんが、わたしに伝えてくれたことも全て否定することになってしまいます。わたしは後悔してません。彼と出会って付き合えたから、今の自分があって、彼がいなかったら今の自分はいないくらい、大切な人です」
だから。
今の生活を捨てることになっても、わたしは。
「わたしは漣くんと別れたくありません。校則で禁止されていることも、罰則として退学になることも知っています。彼と別れるくらいなら、その罰は受け入れます。ですが、彼との交際だけは認めていただけませんか」



