「先生……」
「こっち、来てくれるか」
たぶん、泣いたことに気づいたんだろう。
八雲先生はわたしの顔を見て、一瞬目を見開いたけれど、すぐについてくるように言った。
ーーーコンコン。
「失礼致します」
それから連れていかれた場所は職員室からは少し離れた会議室。
「失礼します……」
そこには。
「七……漣くん、浬々ちゃん……」
ふたりがそこにいた。
そして立っているふたりの目の前に座っていたのは。
「君が、向坂、海凪さん?」
「は、い……」
ビシッとスーツを着たダンディーな男の人。
ツヤツヤの黒髪にはところどころに白髪が混じっているけれど、目鼻立ちがくっきりしていて、不思議と惹きつけるような何かを感じた。
「今地さんは、下がっていいよ。
朝早くからすまなかったね」
「いえ……」
浬々ちゃんはちらりとわたしを見たけれど、何も言わず会議室を出ていった。
「おまえも。
下がっていいよ」
「はい」
そして八雲先生も退出して、会議室の中は目の前の男の人と、漣くんと、わたしの3人になった。



