「いじ、わる……っ」


「っ、やば。
いまの、めっちゃグッときた」


愉快そうに、不敵に。

でも砂糖にはちみつをかけたみたいに甘すぎる微笑みに。


「わかった、から……手、ぬいて……っ」


わたしはとっくに白旗をあげるしかなくて。


「ん、いいこ。
えらい、えらい」


離れていった手がポンポンと頭をなでて、ぎゅうっと体全体を包むように抱きしめてくる。


「はずかしがり屋な海凪の性格はわかってるつもりだけど、甘い声、聞かせてよ」


「っ……」


「俺しか聞いてないし、俺の所為なんだし。それに、その声を聞けるのは彼氏である俺の特権でしょ?」


再度ぎゅうっと力がこもって、体をゆっくり離された。

「俺のせいでそうなってるって思ったら、まじで嬉しいし、たまんない」


頬をなでる手も、目を細めて笑う優しすぎる表情も。


「かわいい声、たくさん聞かせて」


そしてまた降ってきた唇も、その全てから。


『すきだよ』


そう言われてるみたいで。


ずるいよ、漣くん。

また心臓がきゅうっと音をたてた。