「もう、いいでしょっ……!」
「だからだめだって。
じゃあ、これで最後にするから」
「ほ、ほんとに?」
「うん」
「ほんとに、ほんと?」
「うん。
だからお願い、聞いてくれる?」
「っ、分かった……」
「ん、かわいい。
じゃあ、正面向いて」
やだ、なんて言わせてくれない。
言う前にくるっとされる。
「はい、ぎゅー……」
ドキドキドキ。
波打つ心臓の音が絶対届いてる気がして。
静まれ、静まれ。
気づいてほしくなくて、心の中で何度も自分に言い聞かせる。
「やっぱ正面からが1番いいな。
海凪のかわいい顔、ひとりじめできる」
「っ……」
「俺のものって感じがたまんない」
もう、真っ赤どころじゃない気がする。
まだ朝で、授業だってもうすぐ始まるのに。
こんなにいっぱい抱きしめられて、耳がとけそうになるくらい甘い言葉を言われて。
今日1日漣くんのことしか頭になくなってしまう。



