「はいはい。
おじゃま虫は消えますよーだ」
あっ!
「まっ、待って江川くん!」
「ん?」
「あの…っ、その……ありが、とう……」
私たちのこと、黙っていてくれて。
敢えてそれは口には出さなかったけれど、すぐに伝わったみたいで。
「当たり前だよ。
親友と親友の彼女だからね」
「江川くん……」
すぐにふふっと柔らかく微笑んだ。
「岬」
「んー?」
「サンキューな」
「そのかっこで言うな、そのかっこで」
笑っていた江川くんだったけど、ヤレヤレとため息をついた。
っ、そういえば、まだ抱きしめられたままだった……!
「もうっ、いいかげん離れて……!」
「やだ」
漣くーん!!
肩に擦り寄るようにして、頭をグリグリ押しつけられた。
だから朝からやめてええぇーー!
「七流。1つ、貸しだからね」
「分かってる。
今日の放課後のことだろ」
「頼んだよ」
放課後?
なにやらちんぷんかんぷんなわたしに手を振って、江川くんは屋上を出ていった。
一体なんのことだろう?



