「おっ、来たか向坂!」
職員室に行くと、にこにこ顔で先生が待っていた。
「小山から聞いてるよ。
べつに俺は強制するつもりはなかったけど、せっかく来てもらったんだし、もったいないよな!」
「……」
すずちゃんから言われた時、どうしてそう言ってくれなかったんだろう……。
「まあまあ、そんな目で見るなって!
次向坂が日直になった時の仕事はなしにしとくから」
「ありがとうございます……」
「で、さっそくなんだけど」
「これは……?」
「授業で使う教材。俺3年の授業も見てて、大学の赤本とかも使うんだよ」
ドサッと目の前に置かれたダンボールには、問題集の他に、確かに赤本も入ってる。
「さすがにこれを女子一人に持たせるわけにはいかないからな。おっ、きたきた」
瞬間ふわっと鼻を掠めた優しい香り。
涼しげな海を思わせる、マリンの香り。
「わるいな漣も。
手伝ってもらっちゃって」
「いえ」
!!?
「どうした向坂?
そんな化け物でも見たような顔して」
「あっ、い、いえ……なんでもない、です……」



