それなら仕方ない。
「ごめん、すずちゃん」
謝ると、そっかーと残念そうに笑った。
「なら、あたしも残るよ。
頼まれごとなんて、絶対すぐ終わんないだろうし」
持っていたカバンをすずちゃんが机に置こうとすれば。
「大丈夫だよ、小山。
俺も呼ばれてるから」
「漣も?」
そよそよと優しい風が漣くんの髪を揺らす。
どうやら漣くんとわたしの2人が呼ばれてるらしい。
「んー、ならお願いしよっかな。
海凪、もし大変そうならすぐ連絡ちょーだいね?
あたしも手伝うから」
「分かった。
ありがとう、すずちゃん!」
絶対よ?
そう何度も言うすずちゃんを見送って、わたしも持っていたカバンをおろす。
「じゃあわたし、先に職員室に行くね」
なんの用事か分かんないけど、早く終わらせたいし。
そう思って教室を出ようとすると。
「向坂」
次はこそっと囁くように名前を呼ばれて振り向いた。
「職員室には行かなくていいよ」
「えっ」
同時にわたしの横を通り過ぎるタイミングで、ポンッと手のひらへなにかを渡された。
「漣くっ……」
呼び止める間もなく、漣くんは自分の席へと戻っていく。
なに……?
手の中でカサっと音がした。
これ、ルーズリーフ?
急いでトイレに走り、ガチャっと鍵を閉めて中を開くと。
『迎えに行くから、いつものとこで待ってて』
綺麗な字でそう書かれていた。



