嘘吐きな王子様は苦くて甘い

「キャー!やったじゃんひまり!おめでとう!」

放課後立ち寄ったファーストフード店で、私は風夏ちゃんから思いっきり抱き締められた。

「ありがとう、なのかな」

あの日が金曜で、今日が月曜。三日経ってもまだ、私は今朝も頬っぺたを思いきりつねってきた。

「石原も男らしくないな」

風夏ちゃんと違って、菫ちゃんは不服そうだ。

「言い方が気に入らん」

「まぁちょっとキュンにはかけるけどさぁ、ひまりにとっては最高の展開じゃんね!ずーっと好きだった幼馴染みと付き合えるなんてさ!」

「うん、そうだね」

「あれ?あんまり嬉しくない?」

「もちろん嬉しいよ!ただ、まだあんまり実感がないっていうか」

「石原君、何か態度変わった?」

そう言われて、今朝の旭君の様子を思い出す。一ミリも変わったって思えなかったから、私は学校に着いてからトイレでもう一度頬っぺたをつねったんだった。

「石原君って、とことんツンデレボーイなんだねぇ」

シェイクのストローを加えながら風夏ちゃんがそう言う。

「ひまに甘えてんじゃないの?アイツ」

「何、菫は石原君嫌いなの?」

「ひまに対する態度が気に入らん」

「気に入らんとこばっかりじゃん」

おかしそうに風夏ちゃんが笑うから、私もつられて笑顔になった。







「ねぇ、ひま」

「何?」

「ひまと石原は、対等だからね?」

「え?」

「付き合ってもらったなんて、思っちゃダメだよ」

真剣な顔して言う菫ちゃんに、私は思わず言葉を詰まらせる。

「思ってたでしょ」

「いや思ってたっていうか…」

「そうだよひまり!付き合うんだから、変な遠慮なんか要らないんだよ!石原君がシャイボーイなら、ひまりがグイグイいっちゃえばいいんだって!」

「わ、私が!?」

「そうだよ、だって彼女なんだから!」

彼女…私が旭君の、彼女。

人からハッキリ言われると、少しだけ実感が沸く。それから猛烈に恥ずかしさが襲ってきて、思わず頬っぺたを両手で挟んだ。

「照れたり焦ったりしてる石原君、見たくない!?」

「…見たい」

「じゃあ頑張れ!ひまり!」

「…うん!ありがとう、私頑張る!」

風夏ちゃんと二人ガッツポーズを作って。そんな私達を見て菫が呆れたように笑った。

「ひま、おめでとう」

「ひまり、おめでとう!」

「…っ、ありがとう!」

二人のおかげで、少しだけ自信がついたような気がする。

そうだよね、あれは夢じゃない。

私間違いなく、旭君から告白されたんだ。

もうただのお隣さんじゃない。私旭君の、彼女なんだ…!