CHAP5



――大陸歴2020年。
前世の記憶を取り戻してから十一年、サマラは十六歳になった。
この春に魔法研究所に見習いとして入所すると同時に、ついに『魔法の国の恋人』の幕が開く。

パリアロス王国では十八歳を成人とし、十六歳からの二年間は職業に就くための準備期間となっている。
ゲームではサマラと同じく魔法宮廷官を目指す主人公リリザが、魔法研究所に見習いとして入所するところからゲームが始まるのだ。

ゲームのメインキャラは七人。
主人公でプレイヤー自身でもあるリリザ・ミモランダ。十六歳。魔爵ではない庶民の生まれだが、十三歳のときに突然強い魔力が覚醒した彼女を、神殿が『奇跡の子ではないか』とあがめ、以来、大神官のもとで育てられている。

攻略キャラのひとり、バレアン・セレス・バリアロス。十八歳。バリアロス王国の王太子で、いわゆるメインヒーローだ。
その弟で第二王子のホプロン・セレシアン・バリアロス。十五歳。攻略キャラ唯一の年下枠
である。
大神官シャーベリン・ピムリラ。二十五歳。リリザを神殿に引き取った若き大神官。

そして攻略対象であるディー、三十六歳と、カレオ、三十三歳。それから悪役令嬢のサマラ。
以上の七人が軸となって物語が動いていく。――のだが。



「よっ。今日からよろしくな」

「えぇっ!? なんでレヴがここいるの!?」

入所日初日、魔法研究所の研修室にやって来たサマラは、すでに席についていたレヴの姿を見て驚愕する。

六歳の誕生日のとき以来、サマラはレヴと秘密の交流を重ねてきた。土人形で毎日のようにお喋りをし、レヴが王宮に用事があるときには必ずサマラの部屋にこっそり寄って顔を見せてくれた。

ただ彼は相変わらず謎だらけで、それを教えてもくれない。土人形でお喋りしていることも、時々会いに来ることも、誰にも秘密にしろと口止めもされている。

なぜなのか気にならないといえば嘘になるけれど、彼にも事情があるのだろうとサマラは気を遣って追及するようなことはしなかった。
けれど、彼が魔法研究所にいて、しかもサマラと同じく見習いの紫の外套を着ていることはあまりにも予想外だ。これくらいは事前に教えてくれていてもよかったのではないかと、憤りを感じる。

「まさかレヴも見習いなの!? なんで!?」