冬の花

私は大学を卒業した。

女優としての仕事が忙しくなり、
眠れずに学校に行く事もあったけども、
無事になんとか。

卒業式を終え、恩人である裕子さんとちょっとリッチなホテルのレストランでディナーを食べた。

「あかりの親代わりになってもう5年以上経つのか。
早いね」

裕子さんは真っ赤なワインを、飲み干す。

もう料理は殆どないけども、
ワインは何本も追加で頼んで飲んでいる。

一緒に暮らしている時も思ったけど、
裕子さんはかなりの酒豪。

私はワインを二杯程頂いた程度で、
顔が火照って、もう飲めそうにない。

「5年間本当にありがとうございました。
裕子さんが居たから、今の私の成功があると思います」

「そんな事ないよ。
学校は私が通わせてあげたけど、それだけだし。
今、あかりが女優として成功しているのは、
父親で苦労して根性がついたのと。
父親譲りの、その綺麗な顔のおかげだよ。
あかりの過去全てが無駄だったわけじゃないから」

裕子さんは少し酔っているのか、
少し滑舌が怪しい。

それを聞いていて、裕子さんも自分の家族に対して、同じような事を思っているのだろうか?と思った。

逆境が自分を強くして、成功を手にしたのだと。

裕子さんの口から、父親の名前が出て、
久しぶりにその存在を思い出した。

湖に沈めた父親に対しての罪悪感。

時間が経てば経つ程それは薄れていて、
いつか完全に忘れてしまえるんじゃないかとすら思えてしまう。