冬の花

会話の中で、色々と彼の事を知った。

フルネームは、阿部隆生(あべたかお)で、
年齢は24才。


血液型はAで、地元はこの村から遠く離れた所。


一人っ子で両親ととても仲が良いらしく、お互いに誕生日のプレゼントは毎年欠かさない。


そこそこ良い大学を出て、警察学校に入り、今警察官になっている。


その私にはない幸せで恵まれたその生い立ちにも、羨ましくて惹かれてしまう。


「夕べ、ドラマに阿部さんの好きなあの女優出てましたよ。
保田美憂(やすだみゆ)。
見ました?」


「うん。ちょうど休憩と重なって見れた。美憂ちゃん。
相変わらず可愛かったな」


その嬉しそうな顔を、嫉妬で思わずぎゅっと睨んでしまう。


「あかりちゃん、なんでか美憂ちゃんの事嫌いだよね?」


「大嫌い!
だって、性格悪そうだし、
言う程可愛いかな?って。
二十歳とか言ってるけど、もっと老けてるし」


その言葉は、百パーセント嫉妬。


保田美憂はとても可愛いし、
性格だって良さそうに見える。


ただ、老けてるわけではないが、
保田美憂は大人っぽくてその年齢より上に見える。


「うーん。そうかな?」


阿部さんのその言葉に、うんうん首肯く。


彼の好きな芸能人にこんな風に嫉妬してしまうくらいだから、
もし彼に彼女とか出来たら私はどうなってしまうのだろうか?


幸い、今阿部さんは彼女が居ない。


過去には居た事もあるだろうけど、
その辺りは何度訊いても恥ずかしがって教えてくれない。


私はもう17才で流石にこの恋が初恋ではないのだけど、
誰かを好きになったのは子供の時以来で。


だからか、どんな風に気持ちを伝えたらいいのかもわからなくて。


ただ、ただ、彼が好きな気持ちが膨らんで行く。